みなさま
遅くなりましたが、2019年の営巣調査結果のまとめです。
全15回の営巣調査(2回の中止含む)で、LTPスタッフ含め、のべ168名の方に調査に参加していただきました。暑かったり、雨だったりした中、ご協力ありがとうございました。
初めて参加の方には3回の調査参加をお願いしていますが、中止などで3回参加出来なかった方は、残りはぜひ来年の調査に参加していただければと思います。
今年のコアジサシの営巣調査結果を図表にしました。
昨年同様、営巣初期の5/8にカラスに卵を捕食されてしまいましたが、5/11に成鳥20羽、22巣を確認し、順調に成鳥数、巣数は増加し、5/26に成鳥200羽、営巣数406巣になり、6/9にはヒナ12羽を確認しました。
ヒナが生まれると、チョウゲンボウがヒナを捕食するために頻繁に出現するようになります。今年も最低でも2羽のチョウゲンボウがヒナを捕食しており、ヒナの数は増えません。成鳥も6月中に急激に減少し始めてしまいました。
しかし、7月に入ると成鳥が再び増えました。おそらく、梅雨の悪天候等で他の場所で営巣失敗した群れが、森ヶ崎で再び営巣しようとやってきたのではないかと思います。
成鳥数、営巣数は再び増えましたが、やはり捕食者による影響が大きく、ヒナの数は多くはありません。かつてカラス除けに効果があった「いやがらす」を再び投入するも、ヒナだけではなく、卵の消失も多いようだったので、チョウゲンボウ、カラス類の他に、ネコやハクビシンの侵入の可能性も考えられました。結局、飛翔可能な幼鳥の同時確認は最大8羽でした。
実は、営巣調査が終了し、8月に入っても成鳥が数羽、森ヶ崎で確認されていました。近づくと、モビングもしてきます。状況から考えると、ヒナがいるような行動が見られていましたが、8/29に親鳥1羽と幼鳥1羽を確認しました。ひっそりと最後の親子が森ヶ崎で暮らしていたようです。幼鳥はすでに飛翔可能だったので、その後、森ヶ崎から旅立ったようで、8/31には見られなくなっていました。
結果、2019年は、
総営巣数:753巣
推定ふ化数:約400羽
無事に巣立った幼鳥:約15羽
ではないかと推定しています。
これまでの総営巣数、推定ふ化数の経年変化を以下に示します。
近年は総営巣数と同じくらいふ化数があったのですが、今年は下回りました。これは、捕食者の影響だけでなく、荒天による営巣調査中止が何度かあったため、詳しいデータが取れなかったことも理由にあるかもしれません。
しかし、実際調査している感覚では、やはりヒナが少ないと感じました。森ヶ崎のように、毎年同じ場所で営巣していると、捕食者が集まってきてしまうと思います。そういう場所では、捕食者対策をうまくできるかが、繁殖成功のカギになると思います。今年試作したチョウゲンボウ対策シェルターを改良し、来年は少しでも捕食者から守れればと思います。
(チョウゲンボウ対策シェルターについては、9/13-16に帝京科学大学で行われる日本鳥学会で9/14にポスター発表予定です!)
また、東京湾周辺で、コアジサシがある程度の個体数で営巣できる場所が、森ヶ崎以外にも複数存在し、捕食者が集まるリスクを減少させることができることができれば良いと考えています。
東京港野鳥公園に新しく出来た砂礫地や、ラムサール条約登録湿地になった葛西海浜公園などでもコアジサシの誘致や保全活動が行われているので、コアジサシが定期的にうまく繁殖できるようになってくれれば、うれしいです。
調査研究部会